糖尿病性認知症と予防

2015-01-30

●糖尿病性認知症

糖尿病患者は正常者に比べ、アルツハイマー認知症や血管性認知症になりやすいことは以前から知られています。アルツハイマー認知症の脳の特徴は、脳細胞のアミロイドβとリン酸化タウ蛋白の異常な蓄積であり、アルツハイマー認知症は長い時間をかけてアミロイド蓄積からリン酸化タウ蓄積、神経細胞障害に至る経過の長い慢性疾患です。脳は最も多くのブドウ糖を利用し、脳のインスリンは抹消から血液脳関門を通過して脳に伝達されます。インスリン受容体は中枢神経に豊富に存在しますが、最も多いのは海馬や扁桃体など記憶や学習に関する脳の部位で、インスリンは脳の糖代謝以外に神経細胞の伝達や記憶の促進効果も持っています。

●慢性の高インスリン血症は脳細胞内へのインスリンのシグナル伝導の進行を抑制し、脳細胞のインスリン作用を障害して、脳細胞の糖の利用を障害します。

●アミロイドβは神経細胞のインスリン受容体を細胞膜から細胞質の奥に移動させ、受容体の数を減少させて、インスリンの作用を減弱させます。

●脳のインスリンシグナルが低下すると、アミロイドβやタウ蛋白の代謝異常が進行し脳に蓄積します。

●脳で生産されたアミロイドβは体循環に流れインスリン分解酵素(IDE)によって消去されます。高インスリン血症があると、この酵素はインスリンとの親和性の方がより強いのでアミロイドβの代謝が遅れます。

● 高インスリン血症は脳内でもストレスとして働き、炎症性サイトカインの増加を誘導し、神経障害を来します。

●脳内の高血糖の持続、高血糖に伴う代謝異常はAGE(糖化終末産物)を蓄積させ神経障害をきたします。

●糖尿病では脳梗塞がしばしば合併します。糖尿病は動脈硬化を来し特に、無症候性脳梗塞があると認知機能は低下します。

●糖尿病性認知症の予防

高血糖の管理:HbA1c7.5以上は認知症の頻度が高くなります。

★HbA1cが高いほど脳血管や虚血性心疾患は増加しますが、死亡率はHbA1c7.5%前後が最も低くなります。

低血糖の予防:認知症があると低血糖症状を訴えることができず、繰り返す低血糖は海馬の神経細胞死を増加させ認知機能を悪化させます。

血糖の変動を少なくする:血糖の変動は酸化ストレスとして脳血管に作用します。ゆえに、食後高血糖を是正することが大事です。

インスリン抵抗性の軽減:認知症発症のリスクとして遺伝は60~70%、残り30~40%は環境因子によると言われています。サルコペニック肥満やメタボリック症候群のような内蔵脂肪の蓄積はインスリン抵抗性の最大原因です。歩行や脂肪食の制限で内蔵脂肪を減らすことが大事です。

薬としては:GLP-1受容体作動薬の注射が高齢糖尿病および認知症に最もすぐれた糖尿病薬とされています。

GLP-1は血液脳関門を通過し、脳に広く分布するGLP-1受容体に結合します。GLP-1は神経成長因子として働き、神経突起の成長を促して、グルタミン酸によるアポトーシスやアミロイドβなどの酸化ストレスによる神経障害を抑制します。GLP-1は神経修復、抗アポトーシス作用、記憶学習効果を高めます。

★高血圧、脂質異常症の治療は脳の動脈硬化を抑制し、チアゾリジン(アメリカで膀胱癌が発生し現在はあまり使われていません)、ビグアナイド薬はインスリン抵抗性改善薬で、α-GIは食後高血糖を抑えます。

★脳のアミロイド蓄積は認知症を発症する20年も前から始まっています。それゆえ、若い時からの社会交流、知的活動、及び運動習慣が大事です。認知症患者は自分が認知症であることを認めたくないため、プライドが高くなり、認知症といわれると怒りだす傾向にあります。この様なサインも見逃すことなく、認知障害、身体機能障害、記憶障害などがみられたら、早期に手を打つことが大事です。

Copyright©すみれ糖尿病クリニック | 足立区谷中(北綾瀬)の内科・糖尿病・禁煙外来 All Rights Reserved.